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年の暮れに出合う

 休日の今日、予定より一時間遅れて起きた。今日は母校の合唱団の演奏会の日だ。珍しく日中の開催で、あらかじめ仕事を休みにしておいたのがだが1ステージ目には間に合いそうもない。途中からでも仕方ない、と電車を乗り継いで会場に向かったが、乗り換えの御茶ノ水で地下鉄の地上出口を間違ってJRの改札までずいぶん走らなければならなかった。改札を通って階段を降りると、乗るつもりだった電車が走り去って行った。あいかわらず間の悪いことだ、と自分のドジさ加減を目の当たりにしていると、すぐに後続の電車が来た。運行が少し遅れていたようだった。
 会場はある街のホールで、何度か訪れたことのある場所だった。学生たちは控えめながら澄んだ歌声を響かせ、時折のぞかせる表情 は昔の学生と変わらないような気がした。
終演後、一階のロビーで旧知の先輩後輩と話をした。周りの人たちの中には元団員もいたが、知っている人は余り多くはなかった。しばらくすると皆どこかへ移動し始めた。自分たちも、いつまでも立ち話は続けられないので、会場を出て適当な店を選んで入った。店では昔の話や今の仕事の話をした。それぞれにままならないこともあれば嬉しいこともあるのだ。短い時間で残念だったが一時間ほどでお開きとなり、新居を建てた先輩宅で集まろうという話でお別れしたが、実施は中々難しそうだ。
 帰り道、また乗り換えの御茶ノ水で降りると、思い立って楽器店街に向かった。ずっと欲しい欲しいと思いながら迷っていた日本製のラップスチールギターがあって、12月になってやっと購入の決心がついて大手楽器店のサイトなどを調べてみたのだが、廃番のため何処も在庫なしということだった。街の楽器屋に店頭在庫が残っているかも知れないから色んな所に行って探すしかないか、と考えていたばかりで、普段はむしろ敬遠して行くことのない御茶ノ水の坂道を下り、入った店の店員に尋ねると窓側に出ているということだった。外に出て見てみると、四台並んでいるうちの一つが目当てのものだった。スチールギターはそう売れるものでもないだろうけど、たまたま訪れて見つけるというのはそういうタイミングなのだと思い、カードは持っていないので近くの開いているATMを探して再び店に戻り、一ヵ所小さい傷があるとのことで値引きされたものを買って帰った。店員の方から「重いので気を付けて」と渡されたハードケースは小振りながら確かに重量があり、しかし楽器はやはりこうして持ち帰るものだと実感しながら電車を乗り継いで帰った。
 帰宅して、小さい部屋の玄関に引っ越して来て以来ずっと置きっ放しにしていたスノコの束をノコギリでカットして燃えるゴミで捨てられるようにした。それから床下に入れっ放しにしていた木材をゴミ袋に入るサイズに切った。これは前の住まいで防音室を作ったときに余って残しておいたものだ。使い途もなく置いていたものをようやく処分することができた。
 年の暮れ、ゆとりもなく日々が過ぎ、片付けや掃除も出来なかった。一年間、どちらかと言うと仕事のことなどくよくよ考えることが多かったが、どんな風に過ごしても月日は過ぎ、また一年が終わろうとしている。やれることをやれると良い。と思いながら今日も飯を食っていろいろ飲んで寝るのだ。

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子どもたちはパンの本を読む

 昨日も今日も、とても寒かった。そのせいか週末にしては来館者がいつも程多くなかった。
 近頃は少し離れた地域の方も来るようになって、まだ小さいからこちらは遠く感じるだろうと思うような子どもたちの姿を見ることも増えた。そんな子どもたちの様子を見ていると、近所の子たちとは違う屈託のない子供らしさを感じることがあり、何とも言えない気持になる。今日はお母さんと一緒に来た子どもが本を借りる言葉を言うのも恥ずかしがっており、母子の伸び伸びとした様子が却って新鮮なくらいだった。別の、まだ小さな乳幼児は棚の間を歩いてお父さんを探していた。
 仕事を終えて、いつも乗るバスを見送り、日曜日だから次のバスまでしばらく待たねばならない間に、服を買いに池袋へ行くか帰宅して少しでもギターの練習をするか寒空の下で考えた。考えたというより迷った。どっちもそれほどしたくはないことなのだ。ふと浮かんだある考えに衝き動かされ、横断歩道を駆けて渡り、結局池袋へ向かった。
 以前は自転車で行き来していたことも忘れるくらい、池袋は慣れない街になってしまった。訪れるたびに、ターミナルの余りの人の多さに困惑してしまう。上野も人は多いが、駅の構内が池袋よりもゆとりがあるからそれ程気にならないのかも知れない。池袋の地下の人波はものすごい。そんな人波をかきわけて西口へ行き、店員の対応に不慣れなのか方針なのか分からず戸惑いながら目当てのコートを買い、再び戻った地下道では日本語の話せないアジア系の人に呼び止められて手元のカードに書いてある日本語を尻目に言葉も交わさず立ち去った。学生の頃は新宿の南口でよく何か声をかけられていたのを思い出したが、後になってそれが手相の勉強中の人だったのを思い出した。いろいろな人がいろいろな活動をしているものだ。閉店間際の楽器屋では初めてのサムピックを買った。
 時々は買い物も楽しいものだ。でも出来れば必要なものだけ持って暮らせると良い。そんな考えは実践に至らず、家は相変わらず散らかったままだ。帰宅して実家に電話したら何だか疲れた様子だった。親も老い、自分も一層おっさんになっていく。サムピックはどう使ったら良いのか分からない。味噌汁ともやしと豚肉炒めを作って食べた。

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もちチーズ天を食べる

 20代の同僚がある目標を目指してがんばってきたのだが、残念なことにその夢は破れた。それで昨日の夜、男3人でお好み焼きを食べに行った。酒を飲んだら女の子の話になり、お好み焼きもうまかったが、でも同僚はやっぱり元気がなかったように思う。振り返ると自分は自分でちょっと気分を変えようと誰かと食事でもしようと思っていたところだったし、もう一人も独り暮らしの一人飯をいつも持て余していて、励ますための集まりもただ食って飲んで喋って数時間を過ごしただけで、同僚にとって何か意味があったのかどうか、何とも言えない。
 気付けばもう12月になり、朝も夜もとても寒い。約半年ぶりに髪を切ったら夜風が耳に冷たく、今までは髪が長かったのだとただそれだけを実感した。冬になると毎年新しいコートが欲しくなるが、いつも欲しいのが見つからず結局買いそびれる。そして春になるとコートは必要なくなるのだ。