似た人がいる

　アパート住まいなのに犬を飼っている利用者がいる。そのせいで来春の更新が心配だ、でも小さい犬だから勘弁してくれないだろうかと話していたが、とうとう見つかってしまい、ペット屋に引き取ってもらったらしい。主任からその事を聞いたのだが、一緒に飼っていた拾い蛙も雨の日に池に返したそうだ。主任は猫をずっと飼っているのでペットには慣れているが、その人は犬の飼い方がよく分からないようでよく調べに来ていたので、大丈夫だろうかとちょっと心配していた。
　その人が今日来たので犬の話をしてくれるかと思っていたら、古本の事とか別の話しかしない。スタッフ間でいろいろ話をしていると思われたらいけないので、こちらからは何も尋ねないでいると、犬の話になった。大家さんと不動産屋と近所の人と役所に「もう飼わない方がいいんじゃないか」と言われたといい、とても残念そうだった。今度はペット可の所に引っ越して、またあの犬を引き取りたいと話して帰っていった。何で役所が出てくるのか気になったが、聞かなかった。
　午後、たまに見かける小さい女の子が僕の名札をまじまじと見ていたので、何て書いてあるか読めたか聞いたがそれには答えず、お母さんに「別の図書館にとても似た人がいる」と話している。その子が返却しに持ってきた本は、日曜日に行っている別の館で借りたものだった。あっちの館に僕と似た背格好の人がいるので、その人と僕が似ていると思ったのか聞いてみると、お母さんも同じ人が二館にいると思っていたようでびっくりしていた。あっちで借りたのは日曜日ではなかったそうなので、僕を見かけたはずはないのだが、女の子は「すごく似てる」と腑に落ちない様子だった。