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nikki

新緑の季節とは関係なしに

 節電のため、4月いっぱいは開館時間を短縮していた。この間はシフトが違っても退勤時間が一時間しか変わらないから、帰宅時間もそれほど変動せず、生活も(その中身がもともと乱れているのは変わらなくとも)幾分かはペースが定まるようになっていた。5月と6月は通常の開館時間に戻ることになり、今日はその初日だった。どうなるだろう、と内心不安に感じながら出勤すると、館内は穏やかだった。
 午後、事務室にいると、2階から内線で呼ばれた。行くと、例の不審人物が来ているという。以前から古株スタッフ間で話題になっていながら、いつも事後報告だから姿を見ることも出来ないでいたやつだ。その上頻繁にあらわれるわけではないので、関心が持続しないで今日まできたが、先日配架スタッフからチーフに相談があったと聞かされた。フロアに出ていると男が話しかけてきたり、脱いで出したりするのだという。それを聞いて、なんでもっと早く言ってくれないのかと思ったが、言えないでいてやっと相談、ということになったのだろう。以前聞いた話だと、棚の間からじっと見ているとかいうくらいだったが、それ以上の行動が明るみになって全員に注意を呼びかけたばかりだった。
 奥にいるというので探しに行ったら、奥の書架で本を開いていた。あちらも気付いて、一秒ほど、離れていたが顔を見合わせた。2階の男子スタッフに注意を促して1階へ行き(1階カウンターは入り口だから、出入りの際はカウンターの前を通るしかない)、しばらく迷ったが自治体の奉仕責任者の主査の方に内線で事情を伝え、今まだ館内にいるのだと伝えると下まで来て下さった。電話中、男は離れたところからカウンターの様子を伺ったりしていた。主査が下りてきて一緒に奥へ行ったがもう姿はなく、2階に上がるとまたいた。
 何もしないでいては、こちらから何かすることも出来ないが、自治体の主査さんに報告出来たのはよかった。しかしスタッフが人知れずしんどい思いをしていたのは残念なことだ。
 この後、問題の人間はいつの間にかいなくなった。スタッフは、身内に不幸があったので今週休みをもらう、ということになったが、不審者につきまとわれてそんな理由を付けてでも一時的に職場を離れる、というのだとしたらやり切れないことだ。図書館はいかなる人にも公平に開かれた場所だから、一方で常識外にいる望まざる人たちの入り込む余地を持ち合わせてしまうという部分がある。何とかしないといかんが、館内の見回りを増やすくらいしか思いつかない。

 夕方、大雨が降って利用も減り、穏やかに閉館した。しばらくの間、閉館前に込み出すことが多かったから心配していたが、とりこし苦労に終わった。スムーズに閉館できないと必要以上にカッカしたりして、つくづく自分はチキンだなあと思う。もっとどっしり構えてやりたいもんだ。
 帰宅してギターのチューニングを適当にやって弾いたら、鳴りがいつもより良いように感じて、しばらく弾きながら晩飯も食べずにおやつを食べたりした。

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